通関士試験に独学で合格するには
通関士試験に独学で合格するには、まず通関士試験のことを調べることから始まります。
通関士試験の試験科目、試験の実施日、合格率、合格基準を知ることによって、
通関士試験に挑戦するかどうか自分自身でよく考えましょう。
このページでは、独学で通関士試験に合格し出来た管理人の経験から、
ゼロから独学での通関士試験合格に必要なことを紹介していきます。
通関士試験の独学に掛かる参考書費用は1万円あればOK
通関士試験を独学で勉強するには、参考書を購入する必要がありますが、
揃えるべき参考書は、基本書、携帯用基本書、申告書作成問題集を最低
揃える必要があります。
その他には、申告書作成と関税定率法の勉強にタリフ(統計品目表)が
あれば良いのです。
しかし、高価な本の為、異業種から挑戦の方等のタリフお持ちの出ない方は、
税関ホームページから輸出入の統計品目表にネットからアクセス可能ですので、
ここから、品目分類表に慣れておきましょう。
解説や分類例規も見ることが出来ますから、実務経験のない方はここをしっかり
見ておくことで、品目分類の考え方を理解することが可能です。
タリフはネットから見るとして、これらの費用を総合すると、通関士試験の独学に
必要な参考書を一式購入する費用は、1万円あれば十分でしょう。
通関士試験の概要
我が国の通関士制度は、関税の申告納税制度への移行に伴い昭和42年に通関業法が制定された際に導入され、適正かつ迅速な通関を実現するうえで重要な制度として定着したものとなっています。
通関手続が適正かつ迅速に行われるためには、通関業者が税関官署に提出する申告書類等の通関書類が適正であることが必要です。
このため、通関業務に関する専門的知識、経験を有する専門家として、原則として通関業務を行う営業所ごとに通関士を置き、税関官署に提出する申告書類等の内容を審査させなければならないこととされています。
通関士とは、国家試験である通関士試験に合格した者のうち、勤務先の通関業者の申請に基づく税関長の確認を受け、通関業務に従事する者をいいます。(通関業法第13条、第14条、第23条、第31条) (税関ホームページより引用)
通関士試験の試験科目
通関士試験の試験科目は次の3科目です。
1
関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
2
通関書類の作成要領その他通関手続きの実務
3
通関業法
なお、「その他関税に関する法律」とは、具体的には次のものをいいます。
(1)
関税暫定措置法(昭和35年法律第36号)
(2)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和27年法律第112号)
(3)
コンテナーに関する通関条約及び国際道路運送手帳による担保の下で行う貨物の国際運送に関する通関条約(TIR条約)の実施に伴う関税法等の特例に関する法律(昭和46年法律第65号)
(4)
物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の実施に伴う関税法等の特例に関する法律(昭和48年法律第70号)
(5)
電子情報処理組織による輸出入等関連業務の処理等に関する法律(昭和52年法律第54号)
また、これらの科目は、法律のほかに、それぞれの法律に基づく政令、省令、告示、通達を含みます。
(通関業法第23条第2項、通関業法施行規則第3条第2項) (税関ホームページより引用)
通関士試験の日程
通関士試験は例年、10月の上旬に試験日か設けられる、年に一回の国家試験です。
10月に向けて、学習スケジュールを計画することが必要です。
通関士試験の日程は、毎年7月上旬に官報に詳細が公告されますが、おおむね次のようになっています。
まず、受験案内及び受験願書は、希望する試験実施地(北海道、新潟県、東京都、宮城県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県)を管轄する税関で7月上旬から8月中旬の受験の申し込み締切りの日まで配付しています。
次に、受験願書の提出は、8月上旬に2週間程度受付していますので、受付期間内に受験希望の試験実施地を管轄する税関に提出してください。
試験はおおむね10月上旬に行われ、合格発表は11月下旬か12月上旬に行われます。 (税関ホームページより引用)
科目免除無しの独学で行う通関士試験は難易度が高い
通関士試験は原則は3科目の受験が必要です。
私もそうでしたが、異業種からの挑戦の場合は、3科目すべて受験する
ことになります。
しかし、これには例外があります。
すでに、通関業者で働いており、通関業務従事者として届けられている方は
一定に従事年数に応じて試験科目の一部免除制度が存在します。
最大2科目(15年以上)から1科目(5年以上)の免除を受けて受験する方は、
かなり有利になります。
その反面、科目免除を受けることが出来ない異業種から挑戦する方は、
これらの方に比べで不利であることを認識しておきましょう。
独学で進めるなら、なおさら無駄のない計画的な学習が必要になります。
したがって、異業種からの挑戦、独学の両方にあてはまる場合、
通関士試験の難易度は高くなってしまいます。
また、幸運にも、試験科目一部免除となる方は、忘れずに科目免除
申請を行いましょう。
〔科目の免除〕
通関士試験は、3科目の試験により実施されていますが、次に該当する方は試験科目の一部免除を受けることが可能です。
- 通関業者の通関業務又は官庁における関税その他通関に関する事務(税関の事務及びその監督に係る事務をいう。)に従事した期間が通算して15年以上になるとき・・・関税法・関税定率法と申告書作成の2科目免除 (通関業法のみ受験)
- .通関業者の通関業務又は官庁における通関事務(税関における貨物の通関事務(その監督に係る事務を含む。)をいう。)に従事した期間が通算して5年以上になるとき・・・申告書作成・通関実務の1科目免除(2科目の受験)
科目免除者は非常に有利
先に紹介しました、通関士試験の科目免除制度ですが、該当する方は
非常に有利です。
中でも、2科目免除となる15年以上の従事期間をお持ちの方は、
通関業法だけの受験になりますから、通常であれば合格間違い無し
の有利さです。
5年以上の従事期間の方は、申告書作成・通関実務の1科目が免除に
なりますので、2科目に集中して学習することができるため、合格率は
高いはずです。
このように、通関士試験は科目免除者が有利となっておりますが、
私のように異業種から独学で合格し、通関士として働いている方が、
実際には大勢いましたので、異業種からでも十分合格可能な試験である
ことは実感として感じます。
通関士試験の合格率
では、通関士試験の近年の合格率を見てみたいと思います。
過去3年間の年度ごとの通関士試験の合格率を表にまとめました。
平成25年 | 平成26年 | 平成27 | 平成28年 | |
受験申込者数 | 11,340人 | 10,138人 | 10,018人 | ? |
受験者数 | 8,734人 | 7,692人 | 7,578人 | ? |
1科目免除 | 760人 | 716人 | 696人 | ? |
2科目免除 | 186人 | 178人 | 193人 | ? |
合格者数 | 1,021人 | 1,013人 | 764人 | ? |
合格率 | 11.7% | 13.2% | 10.1% | ? |
過去3年間の通関士試験の結果を、税関ホームページよりデータ参照に
させて頂いて表にしましたが、かなりシビアな現実が浮かび上がってきます。
試験科目一部免除者が合格率を上げている!?
科目免除者と合格者数(赤字の箇所)に注意して頂きたいのですが、
なんかすごいと思いませんか?
すごいと思うのは「試験科目一部免除者と合格者数」がほぼ近い数字
となっていることです。
先にも述べましたが、科目免除で試験を受ける方は最初から有利です。
特に、業界の方はベテラン実務者は2科目免除、中堅どころでも5年で
1科目免除です。
これらの方が、毎年の通関士試験の合格者に多く含まれているものと
考えるのが妥当です。
私の知っているところですと、若手の業界の方は一科目免除となる年に
受験する傾向がありましたし、何度受けても受からなかった方も経験15年
となり2科目免除となった回に見事合格しておりました。
やはり、科目免除者は有利です。
個人的な感情としては、3科目受けた者として、不公平感に近いやや
腹立たしいものがあります。
こういった事情を考えると、科目免除を受けることが出来ない3科目
受験者の実質の合格率は公表される合格率の半分以下になることは、
おそらく間違いないと思います。
つまり、公表されている合格率では科目免除者を含み概ね受験者10人
に一人ぐらいの合格ですが、科目免除の無い3科目受験の場合は、
実質20人に一人ぐらいの合格となる可能性が高いということです。
これらを認識した上での学習が必要となります。
真剣に試験勉強した人は合格率を気にする必要はない試験
通関士試験は、競争試験ではなく合格基準が設けられす。
つまり合格基準に達すれば必ず合格となる絶対基準の試験です。
あくまで、合格基準に自分が達することができるかによって合否が
分かれます。
その為、実のところシッカリ学習した人には合格率はあまり関係なく、
合格が見込めます。
シッカリ学習した方から見ると、合格率の低さは「周りが学習不足」と
いうふうに見ることができる試験でもあることをお忘れなく。
通関士試験と他の国家試験の難易度の比較
通関士試験をこれから受験しようとする方にとって、他の国家試験
と比べて、通関士試験がどれぐらいの難易度であるかも気になる所で
あると思います。
国家試験はそれぞれその分野について法令の試験となりますので、
一概に比べることは難しいのですが、通関士資格をお持ちの方の中に
他の国家資格をお持ちの方もおられました。
具体的に言うと、社会保険労務士や行政書士の資格をお持ちの方が
いましたので、この近辺の難易度の試験と近いものがあるのではないか
と推測されます。
共に、一桁台の合格率の国家試験ですので、合格率から見ても近い難易度です。
つまり、他の国家試験で10%近辺の合格率の試験を合格済みであれば、
通関士試験も合格可能なのだと思います。
通関業法、関税法、関税定率法どれから勉強するべきか?
それでは、効率が良く学習するための順序について、お話します。
通関士試験では、通関業法、関税法、関税定率法が主な学習科目です。
外為法など一部分のみの学習が必要な箇所もあります。
おススメは関税法から
0から通関士試験についての学習をする場合は、どの科目から勉強
すれば、効率が良いか考えた場合、おススメは関税法から始めること
が効率的です。
関税法は、「輸出とは」「輸入とは」とはいった基礎的な定義が定め
られています。
その他、「外国貨物」「内国貨物」など、まず貿易に関する法令を
理解する上での必要な基礎知識を学ぶことになります。
関税定率法は主には分類に関する要件を定めたものですから、
「関税法」を理解した後に「関税定率法」を学習していくことが
おススメの学習法になります。
「通関業法」については、通関業者に課される義務等を定めたもの
であり、「関税法」「関税定率法」とは直接リンクしておらず、
暗記的な学習になりますので、一通り「関税法」と「関税定率法」を
マスターしてからの学習で十分間に合います。
関税定率法は品目分類のルールを中心に勉強
関税定率法は品目分類のルールを中心にマスターしていきます。
この部分が、未経験者には難しいと考えられる箇所です。
本来、品目分類は「輸出統計品目表」「実行税率表」という別冊の表に
見やすく横書きで記載されています。(通称タリフ)
全ての品目を分類可能とするため、細かく分類要件が記載されており、
試験においても抜粋され、それぞれの表が問題文として出題されますから、
日頃から、目を通していくことが望ましいでしょう。
分類の見方のポイントとしては、前の分類番号から後ろに行くにしたがって、
加工度合いが高くなる構成となっています。
そのほか、欄外に「注」として記載される事項を見逃さないことがポイントです。
通関業法は最後に学習する
通関士試験の3科目中で最も難易度の低い科目は、通関業法となります。
この科目は、2カ月程あれば十分に学習が可能です。
そして、暗記的な要素が強い科目ですから、試験日から近い時期に学習
する方が、記憶の維持を考慮すると、効率的な学習となります。
計画的に勉強することが必要
通関士試験の各科目の学習法について紹介しましたが、
具体的な学習スケジュールを計画することも必要です。
例えば、「関税法」3カ月、「関税定率法」3カ月、「通関業法」2カ月など
と期間を決めて試験科目をマスターしていきます。
さらに、全科目を8カ月でマスターした後、1〜2か月は過去問題で実線練習をする
期間も予定しておくというような計画です。
1月から学習を始めれば、10月の通関士試験日までに間に合います。
独学組も通信講座を学習方法を知ることによって、学習計画や学習ポイントを絞る
参考になりますので、資料請求などを利用してみるのも一つの方法です。
通関士試験に必要な勉強時間
通関士試験の効率的な勉強法については先に説明したとおりです。
では、どれぐらいの勉強時間が合格するためには必要なのかも紹介します。
例として、私自身の勉強時間をあげると、一日に勉強していた時間は
「2時間から3時間」でした。
1月から勉強を開始して、平均して2時間は毎日勉強していたと思います。
つまり、ひと月に60時間勉強し、約10カ月として、合計600時間程の
勉強時間が合格するまでに必要な勉強時間でした。
私のような平均的な能力の人間が通関士試験に取り組んだ場合は、
「600時間学習」が合格ラインに到達する目安になると思います。
スキマ時間を有効活用する
通関士試験合格に必要な目安時間は600時間と紹介しましたが、
私の場合は、仕事をしながら勉強をしていたこともあり、すべて
自宅で勉強していたわけではありません。
電車とバスで通勤していたので、通勤時間を勉強時間にフル活用しました。
通勤時間で1日1時間は確実に勉強することが出来ましたので、自宅で
残り1時間は最低勉強するというように学習を進めました。
現在お仕事中の方は、通勤中に学習時間を取れないか考えてみてください。
土日は勉強を休んでも大丈夫
次は土日等の休日の過ごし方についてですが、私の場合は1週間のうち
日曜日は休息日として勉強はしないようにしていました。
毎日、仕事の他に受験勉強を行うことは、結構きついものです。
1か月だけ頑張るような勉強ではないので、仕事と両立するためにも、
休養日は設けるようにようにしましょう。
その場合は、休み前に1時間〜2時間ほど余分に勉強しておきましょう。
独学用の参考書選び
独学で通関士試験を勉強する場合は、参考書選びが大変重要です。
信頼できる「参考書」を選ぶことが、独学での通関士試験合格への
第一歩となります。
私の経験から信頼できる「参考書」について、別ページで記事にして
いますので、「参考書選び」の際に参考にして頂きたいと思います。
あれこれ、考えたくない方は素直に「通信講座」の利用を進めます。
異業種からの挑戦する場合は、申告書作成問題がポイント
異業種から独学で通関士試験に挑戦する場合に、一番困る科目は通関実務です。
私もこの科目のが一番不安でした。
申告書作成については、現在はNACCSシステムでの入力内容を問うものですが、
税番の分類と計算方法が理解できていない場合には正解を導けないように問題は
作成されています。
その為、実際の通関実務に触れる機会のない受験生は、申告書対策問題集と
過去の通関実務の問題を解き、少しでも経験値を上げておくことが必要です。
経験値が少し上がっていれば、本番の試験問題にも対応が可能だと思います。
申告書の過去問の解き方について、随時記事を今後作成していきますので、
試験勉強に役に立てて頂ければと思います。
わからない問題への対処法
わからない問題がある場合は、複数の参考書を読んでみることが良いと思います。
購入すると余計な費用が掛かるの、分からない部分だけ立ち読みでいいでしょう。
大きな書店で、ポイント絞って読んでみましょう。
理解できたら儲けものです。
それでもわからない場合は、潔くあきらめて、他の部分を頑張りましょう。
通関士試験当日の準備
それでは、通関士試験前日の準備についてお話しましょう。
試験前日はゆっくり休むこと
翌日の試験は、午前午後とも頑張らなければいけないので、
フルパワーで試験に臨めるように休養を第一にしましょう。
睡眠不足では、解ける問題もとけません。
持ち物の確認をすること
試験を受験するために必要なものを、前もって準備しておきましょう。
受験票や電卓、筆記用具、時計などです。
忘れ物して、受験できなかったりしたら最悪ですからね。
試験会場への交通手段も調べるておくこと
初めての受験の場合は、試験会場への行き方や到着時間も
シッカリ調べましょう。
落ち着いて、試験会場へ向かう電車の中で、最後の「参考書」の
確認をできるようにしておきましょう。
エネルギー補給の準備をしておく
通関士試験は午前と午後の試験です。
3科目受験組は、エネルギーを使いますので、朝食はしっかり食べましょう。
試験中に、お腹が「グーグー」鳴かないようにしておくと私の場合は集中できました。
また、お昼休みは会場にもよりますが、周辺のお店が混みますので、あらかじめ
昼食を持っていった方が落ち着くと思います。
大学等が試験会場ですから、キャンパスの風景でも楽しみながら、外で食べるのも
気分転換に良いです。
最後はジンクスに頼る
ジンクスというか、自分なりの気分の上がるものを利用しましょう。
私の自己暗示は、他力本願ですが、いつも勝負時は「ユンケル皇帝液」を
飲むようにしています。
飲むと、不思議とやる気になれていると思います。
音楽が好きな方は、音楽を聞いてリフレッシュしても良いですし、いろいろ
自分のここ一番の時に気持ちを上げてくれるものがあると思います。
それも忘れずに、持っていきましょう。
終わりに
以上、通関士試験を独学で合格するために参考にして頂きたい事を、
紹介しました。
通関士試験は勉強しなければ合格しない試験ですが、勉強さえすれば
どなたでも合格できる試験とおもいます。
と言いつつも、私は一度落ちています。
あの時、あきらめずに翌年も受験して良かったなーと今は思います。
通関士試験は諦めなければ、必ず合格する試験です。
皆さんも、最後まであきらめずに頑張りましょう。